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睡眠時無呼吸症候群

イビキと睡眠時無呼吸症候群

古来、イビキは熟睡の証と考えられ、気持ち良く眠っている姿とされてきました。しかし、実際にはイビキは睡眠中に気道が狭くなることで起こる呼吸障害です。気道が完全に閉塞すると、「睡眠時無呼吸症候群」ということになります。この呼吸障害は睡眠中であるため、本人が自覚しにくい点も要注意です。
 

無呼吸の睡眠に対する影響

無呼吸が続くと身体の酸素濃度が低下し、脳が呼吸再開の指令を出します。そのため、瞬間的な覚醒が繰り返され、睡眠の連続性が妨げられます。結果として、浅い睡眠と覚醒が繰り返され、深い睡眠が現れにくくなり、脳も身体も十分に休めません。
 

睡眠時無呼吸症候群の症状

「睡眠時無呼吸症候群」では、何時間眠っても睡眠の質が低く、熟睡感が得られません。「不眠症」として自覚されることもあり、日中の眠気や集中力の低下、疲労感が現れるため、「うつ病」と誤解されることもあります。居眠りが原因で「怠け者」扱いされることも少なくありません。さらに、酸素濃度の低下により朝の頭痛や心臓への負担が増え、「高血圧」や「不整脈」、「脳卒中」などの重大な健康問題を引き起こす可能性があります。早期発見と早期治療が重要です。

ストレス性不眠症

誰でもストレスを感じると「不眠症」になる可能性があります。
「不眠症」の悪循環は信号機の色で例えると分かりやすいかと思います。
 
青信号:正常な状態
何か嫌なことがあった夜、布団の中で悶々としてしまう経験は誰にでもあります。しかし、上手くストレスを解消できれば、再び安眠することができます。
 
黄色信号:不眠症の始まり
一度でも「不眠症」を体験すると、「今晩眠れなかったらどうしよう」という不安感に襲われます。この不安感はその日の朝から始まり、「不眠症」の悪循環に陥ります。
 
赤信号:慢性不眠症
適切な対応がなされないまま継続すると、「寝酒」に頼ってしまうなど、慢性の「不眠症」となってしまいます。
 

「不眠症」でお困りの場合、早めに医師に相談し、黄色信号の段階で対処することが、不眠症の悪循環を防ぐ鍵です。

ナルコレプシー

不眠症は広く認知されていますが、過眠症についてはあまり知られていません。過眠症は、日中に過度の眠気を引き起こす状態で、「眠り過ぎる病気」や「居眠り病」とも呼ばれています。その中でも代表的な疾患がナルコレプシーです。
 

ナルコレプシーの特徴

ナルコレプシーの深刻さは、その認知度の低さにあります。この病気は十代半ばに発症することが多く、人生の重要な時期に影響を及ぼします。学校や職場で居眠りをしてしまい、周囲から「気持ちの持ちよう」「ちゃんと睡眠をとっているのか?」といった誤解を受けることがあります。これにより、自信を喪失し、学業や仕事に支障をきたすことがあります。
 

主な症状

  • 睡眠発作:耐えがたい眠気が突然襲い、食事中でも眠ってしまうことがあります。
  • 情動性脱力発作:笑った時などに全身の力が抜けてしまいます。
  • 入眠時幻覚:寝入りばなに幻覚のような体験をします。
  • 睡眠麻痺:いわゆる「金縛り」が起こります。

 
このように、ナルコレプシーは過眠症の一種であり、特に若年層に深刻な影響を与える病気です。早期の認知と適切な対応が重要です。
詳細は、「なるこ会」ホームページに解りやすい説明があります。
 
当院では、まず臨床症状について詳しくお話しを聞きます。次に、MSLT(反復睡眠潜時テスト)という、1日に5回の短い検査を行います。
(例)8時~8時30分・10時~10時30分・12時~12時30分・14時~14時30分・16時~16時30分
 
この検査は、ほぼ一日がかりとなります。慣れない環境で顔や身体に電極を取り付けた状態で、30分間の短い時間に入眠するかどうかを判定します。寝入りからレム睡眠が現れる場合は、ナルコレプシーが疑われます。通常、レム睡眠は寝入りから数十分後に現れるものです。
また、診断が確定し治療を開始しても、精神的なサポートも同時に重要となります。

レム睡眠行動障害

「レム睡眠行動障害」という病名はあまり聞き慣れないかもしれません。この障害は「夢遊病」(睡眠時遊行症)と似た症状を持つことがありますが、異なる病気です。
「睡眠時随伴症」というカテゴリーにはその他、歯ぎしり・睡眠時遺尿・夜間下肢のけいれん(こむらがえり)なども含まれています。
 

レム睡眠とノンレム睡眠

  • レム睡眠:脳は夢を見ており、身体の筋肉は休んで動けません。→ 身体の眠り
  • ノンレム睡眠:脳はゆっくり休んでおり、身体は動けます。→ 脳の眠り

【関連:睡眠の基礎と睡眠障害
 

レム睡眠行動障害とは

レム睡眠行動障害は、レム睡眠中に身体の筋肉が動き、夢の内容に一致した行動が出てしまう病気です。「こんな夢を見てこんな行動をした」と言って受診されることは少なく、大きな寝言や叫び声、不自然な仕草などをご家族が心配されて気が付かれることが多くなります。
 

症状の例

症状が重い場合、レム睡眠行動障害では寝室内を歩き回ったり、隣で眠っている人を殴ったり、物を蹴ったりといった暴力的な行動が見られることがあります。このような行動に対して、家族は心配して本人を制止しますが、「怪獣に追われる夢を見ていた」といった説明がされることが多く、深刻さが理解されにくい状況です。この結果、本人や家族が怪我をするリスクが高まります。
 
元サッカー選手が夢の中でシュートを放つ際に足に激痛を感じ、整形外科で足指骨折と診断されたケースがあります。これは、夢の内容に一致してベッド柵を蹴った結果です。
 

原因 : 詳細は不明です。(1986年に発表された疾患概念です。)
年齢 : 基本的に高齢者に多いのですが、若い方でもめずらしくありません。
注意 : パーキンソン病などの脳の病気と関連がある場合があります。

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)と
周期性四肢運動障害

2023年に厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、睡眠障害に関する指針が示されています。その中でも、睡眠中の激しいいびきや呼吸停止、足のぴくつき、むずむず感についての注意が促されていますが、各メディアでは「睡眠時無呼吸症候群」に関する情報が多く見受けられます。しかし、実際の有病率から見ると、「レストレスレッグス症候群」や「周期性四肢運動障害」の方が多いのが現実です。
 

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

【 特徴 】
特に夜間お布団に入ると、下肢を中心に不快で耐えがたい感覚が起こるために、じっとしておれなくなり文字通りの「むずむず」感でとても眠れません。入眠が妨げられますが、足を動かすと楽になるのも特徴の一つです。
 
【 症状 】
「むずむず脚症候群」とは言うものの、人の感覚は様々です。
「むずむず」の他にも例えば、イライラ・ヒリヒリ・モゾモゾ・虫がはう感じ・痛い・かゆいなど感じ方は多様です。
そのため、整形外科や皮膚科を受診される方もいらっしゃいます。
 

周期性四肢運動障害

【 特徴 】
夜間睡眠中に足のピクツキが周期的に出現して、睡眠の持続性を妨害します。ご本人は気がつかない場合も多くあります。
 
【 症状 】
足のピクツキのために中途覚醒を中心とした「不眠症」と感じたり、夜間睡眠の不良から昼間の眠気(過眠症)や倦怠感を感じて「睡眠時無呼吸症候群」と勘違いしてしまうことがあります。
 
 

・上記の病気に関係のある主な身体状況
妊娠・鉄欠乏性貧血・腎不全・透析・胃切除後・慢性呼吸不全・心不全・関節リウマチ・糖尿病・甲状腺機能低下症・パーキンソン病など。
※ 基礎疾患が無いか若年発症の場合、家族内発症のこともあります。
※ ストレスなどは病状の強弱と関連があるようです。

リズム障害

「リズム障害」は正式には「概日リズム睡眠障害」と呼ばれ、中でも「時差症候群」(時差ぼけ)が有名です。普段は、太陽の昇降によって生活リズムが整っていますが、飛行機で移動すると「時差」が生じ、現地の明暗サイクルに身体が適応できなくなることがあります。
かつては船旅の時代であったため、この問題はそれほど深刻ではありませんでしたが、飛行機のような高速移動では身体のリズムが追いつかず、苦労します。リズム障害を考える際には、時差ぼけを思い浮かべると理解が深まるでしょう。
 
また、「交代勤務睡眠障害」も重要な問題です。生体リズムが通常の眠りの時間に働いたり、逆に通常の活動時間に眠ったりすることで、リズムに歪みが生じます。現代社会では、24時間営業のコンビニエンスストアやファミリーレストラン、昼夜を問わず稼働する工場などがあり、多くの人が三交代制や二交代制で働いています。各職場でも対策が講じられています。
若い頃から交代勤務に慣れている人は比較的適応しやすいのですが、年齢を重ねてから交代勤務に入ると、生体リズムが整いにくくなり、体調不良を引き起こすことがあります。
 
「睡眠相後退症候群」という病気もあります。これは「昼夜逆転」の現象を伴い、朝起きられずに登校や出社ができなくなる状態です。生体時計の異常が指摘されることが多いのですが、実際にそのような異常が見られるのは稀で、主に心理的ストレスが原因となっています。
 
現代社会はインターネットやゲームの発展により、深夜になっても退屈しなくなった結果、心理的要因による「睡眠相後退症候群」が生じてしまいます。この状況が異常かどうかは、価値観の違いによって意見が分かれるところです。
 
しかし、結果として学校に行けなくなったり、進学や就職に困難をきたす場合には、薬物療法やカウンセリングなどの治療が必要となることもあります。