睡眠とは?
睡眠の主な役割は「エネルギーの保存」とされていますが、ただ長時間眠れば良いというわけではありません。人それぞれの体質によって、必要な睡眠時間は異なります。
例えば、短時間睡眠者として知られるナポレオンは約3時間、長時間睡眠者であったアインシュタインは12時間の睡眠をとっていたと言われています。睡眠時間だけではなく、睡眠休養感の確保が重要になります。
睡眠には「レム睡眠(Rapid Eye Movement)」と「ノンレム睡眠(Non-Rapid Eye Movement)」の2種類があり、これらは周期的に交互に現れます。レム睡眠中は脳が覚醒に近い状態となり、夢を見やすくなりますが、身体はリラックスして休んでいます。身体にとっては重要な睡眠です。
一方、ノンレム睡眠中は脳が深く休んでおり、心身の回復が進みます。レム睡眠とノンレム睡眠が交互に出現する仕組みは、かつて暗闇の中で寝ていた人間が外敵から身を守るために、脳と身体を交代で休ませる必要があったことの名残りといえます。
年齢と睡眠
小児は睡眠時間が長く、深い睡眠の割合も多くなります。「寝る子は育つ」という言い伝えは、科学的にもほぼ正しいと言えるでしょう。成人になると、睡眠時間や質はほぼ一定に保たれますが、60~70歳を境に睡眠時間や質が低下する傾向があります。これは、睡眠がエネルギーを蓄えるための時間であり、年齢とともに身体の新陳代謝が落ち、エネルギー消費が減少するためと考えられています。
しかし、身体が年齢を重ねても、気持ちはまだ活発なままで、深い眠りを感じにくくなると、「不眠症になったのでは?」と不安に感じる方も少なくありません。
睡眠障害とは?
睡眠障害には「不眠症」だけでなく、「睡眠中の呼吸が乱れる」(睡眠関連呼吸障害)、「昼間にとにかく眠くなる」(過眠症)、「睡眠中に無意識の行動をとる」(睡眠時随伴症)、「昼夜が逆転する」(リズム障害)など、さまざまな状態があります。
不眠症の影響
不眠症の影響について考えてみましょう。
夜に十分な質の高い睡眠が取れないと、翌朝には血圧が上昇しやすくなります。
日中の活動においても、集中力が低下し、仕事や学業の効率が悪くなることが考えられます。例えば、運転中に眠気が襲ってきて、注意力が散漫になり、交通事故を引き起こす危険性も高まります。
不眠症の悪循環
ストレスによって一時的に眠れなくなることは、誰にでも起こりうることです。しかし、そのストレスが解消されないまま、「眠れなかったらどうしよう…」という不安が強まると、さらに眠れなくなってしまう悪循環に陥ることがあります。
このような状況では、医師に相談し、適切な治療が必要となる場合があります。しかし、日本ではお薬に対する誤解が根強く、お薬に対する不安から「寝酒が良い」と考える人も少なくありません。そのような誤解から、慢性的な不眠症へとつながってしまうこともあります。
焦らずに、担当医師と十分に相談しながら治療を進めることで、不眠症から解放される可能性が高まります。
一方で、寝酒は一時的に入眠を助けることはあっても、睡眠の質を著しく低下させ、翌日の生活に悪影響を及ぼします。不眠症が悪化し、治療が難しくなるリスクもありますので、注意が必要です。